分け合うこと　－１８．泣き疲れたある夜　－

ミサが昼職を始め全てが順調かというと、
私の中にはいくつか心配すべきことがあった。
最も心配なのはミサの体調だったが、
不調を訴えるどころか快調という感じだった。
そして、気になったのは、ミサの家庭環境。
日々の会話の中で私は時々、探ったりした。
まずは自身のことから語りつつ、

リレーでこけちゃってさぁ！
ミサは子供の頃、運動会どうだった？

みたいな感じで。
彼女はあまり深く語ろうとはしなかった。
だから彼女の思い出のピースを集めるのに、
結構な時間を要した。そのピースを集め、

“これでミサのパズルが見えてきたかも”

という頃の或る日。ミサは私に告白した。
ただ、それは残念ながらここでは書けない。
申し訳ない・・。まあ簡単に言うと、

両親が居ながらミサは幼少から孤独だった。

この話について、ミサはあっけらかんと話した。
悲しみを通り越して呆れているように見えた。

私ね、実家で邪魔者扱いされるの。

被害妄想だと感じる人もいるかもしれない。
だが、全ての話を聞いた私には、
ミサの両親に怒りすら湧いた。

親として最低だっ！

そう叫ぼうとしたが、ミサの親は親。
そんなことを叫んだらミサが悲しむ。
咄嗟のところで私は言葉を飲み込んだ。

“そっか・・だから離婚の件も・・”

ミサは思い出をひとつ語るごとに最後は、

お母さんに嫌われたくないから

という一言で締めていた。
彼女は家族の愛情に飢えていた。
それを笑顔でずっと隠して生きてきた。
親を心配させたくないという一心で。
ミサの過去のパズルが完成した瞬間に、
私はもう・・ダメだった。

ミサっ！

本当に情けないことなのだが、
彼女を抱きしめて泣いた。それしかできなかった。

ひでさん、痛いよ・・
大丈夫だよ、ごめんね・・

逆にミサが私の頭を撫でて慰めてくれた。苦笑
歳をとったせいか、私の涙腺は弱すぎた。

同情してくれてありがとう・・

もう本当に自分が恥ずかしかった。

ど、ど、同情、したって、い、いだろ
ミ、ミサの、こと、、す、好きなん、だよ、お！

本当に情けないんだけど。
今も、これを書きながら泣きそうだし。
情けなさすぎるほど泣きながら私は、

“ミサの両親に会って挨拶をしたい”

そう思った。本当は付き合い始めに
挨拶に伺いたいと思っていた。
だが、当初はミサに激しく拒否された。
でも、その理由を知った今だからこそ、
ミサの両親に会いたいと思った。
泣くだけ泣いてしまった後、

ミサ、

ん？なぁに？

俺、ミサの両親に挨拶してない。

えっ・・うん。

ウチ古いし汚いし・・あのね、
お母さんには、ひでさんのこと前から話してるよ。

マジか。笑　　まだ挨拶してないのに・・苦笑
失礼なことしてしまったな・・。

ひでさんの話をしたら、
すごく優しい人なんだねって。

そういう人は大切にしなさいって。
だから私、大切にする、って言ったの。笑

あ、ありがとうございます。(・.・;)

急にそんなことを言いだすものだから、
私は激しく照れてしまったと同時に、
なおさらミサの両親に会いたくなってしまった。
その気持ちをミサに伝えると、ミサは真顔で、

ひでさん・・本気で言ってるの？

うん、本気だよ。

すると、今度はミサが私を抱きしめて泣いた。

なんなんだ、このバカップルは！笑

だ、だってぇ！ひでさんがぁ、わ、私のこと、
し、真剣に、にっ・・もうっ！ふぇ～ん！

そんなある夜の出来事でした。

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